Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Read 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) by 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 108,647 characters · 215 screens
多くの悲劇のうちに在って、なおこのうららかな心を失わしめない、思惟像はそういう風情において成立つ。現世の悲哀を思惟する眼差が、同時に浄土のはるけさへの郷愁を語るのである。私はロダンを退けようというのではない。西洋の彫刻をつまらぬとは思わない。ただ比較を絶したものがあるのだ。このみ仏に接していると、おのずから故郷へ還ったような安らいを覚ゆるのである。尼寺の本尊であることも意味深い。
このみ仏は元来木彫であるから、広隆寺の思惟像のように、いまよりもっと柔かく美しい姿を現わしていたであろう。後になって保存のため漆で真黒に塗りつぶしたので、いまは鋼鉄のような感じを与える。これは私の想像であるが、今より百年あるいは二・三百年経った後、この漆が剥脱して、もとの木肌があらわれたとき、その色彩と陰翳はいかばかりすばらしいであろう。私はこのみ仏に、そういう将来を期待しているのだ。そうなる頃はむろん私は生きていない。拝することが出来ないのは残念であるが、その代り私自身も仏さまになっている。
――昭和十四年春――
中宮寺に思惟の像を拝して
いにしへの 飛鳥をとめと 慕ばるる 尼のみ寺の みほとけや 幾世へにけむ 玉の手の 光りふふみて 幽けくも 微笑せたまへる 頬にふれつ 朝な夕なに 念はすは 昨の嘆きか うつし世の 常なき愁か