Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
おおえどおうごんきょう
大江戸黄金狂
野村 胡堂
Read 大江戸黄金狂 (おおえどおうごんきょう) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 26,754 characters · 53 screens
「藪から棒でなくてよかったでしょう」
「洒落を言うな、――俺は少し急ぐことがある」
山浦丈太郎はお滝をかきのけて、箱根笹の藪へ――杣道を辿って飛込もうとするのです。
「まア、本当に関所破りをなさる積り?」
お滝はフイと身を開きました。
「心願の筋があって、此処を登らなければならないのだ」
「どんな祟りがあっても」
「くどい」
「箱根関所の元御役人が、何も彼も心得て関所破りをなさると、容易のことでは済みません――命にかけて此処を登る御用と言うのは何んでしょう?」
「それを聞いてどうする」
「まア、そんな怖い顔をなすって――、私は、あなたのお為を思って申上げるのですよ。悪いことは申しません。黙って此処からお帰りなさいませ、――あなたのお望は、私が代って果して上げます」
「俺の望み? 俺の望みは命を捨てに行くのだよ、敵を討たれに行くのだ」
「まア」
「それをお前が代ってくれると言うのか」
山浦丈太郎の頬には、皮肉な微笑が浮ぶのでした。
「たったそれ丈け? 山浦様」
「命を捨てることが、たったそれ丈けというほど手軽か」
「これは? 山浦様」
お滝は帯の間から、錦の守袋を取出して、目の前にチラチラさせるのです。