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だいぼさつとうげ

大菩薩峠2

中里 介山

Read 大菩薩峠2 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 195,601 characters · 387 screens

Aozora Bunko

「先生、お一つ、いかがでございます」

駕籠の中の竜之助に持って行って、次に、

「若い衆さん、お前も一つどうだね」

「へえ有難うございます」

この駕籠舁は海道筋の雲助と違って、質朴なこの辺の百姓。

「御新造様、一ついかがでございます」

「駕籠を出ていただきましょう」

がんりきが、また猪口を出す手先をお絹は見咎めて、

「百蔵さん、お前の手はそりゃ……」

「ええ?」

がんりきは驚いて手を引込ませ、

「ナニ、いたずらでございます」

と言って、左右の駕籠舁の方に気を兼ねるらしい心持。けれども質朴な駕籠舁は、この時に眼を見合せました。

「こりゃ甲州無宿の入墨者だ、この入墨者を峠から一足でも甲州分へ入れた日にゃあ、こっちの首が危ねえ」

こう言って駕籠舁どもが、一度に立ち上って噪ぎ出しました。

「抜いた抜いた!」

噪ぎ出した駕籠舁が急に仰天して逃げ出します。見れば駕籠から出た机竜之助が刀を抜いて立っていました。

「先生、何をなさいます」

竜之助は物を言わず、逃げて行く駕籠屋は追おうともせずに、がんりきの声のする方へ向って来ますから、

「あ、危のうございます」

がんりきも驚く、お絹も驚く。