Japanese reading practice

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

Read 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 264,133 characters · 524 screens

Aozora Bunko

そこへ不意に鼻を鳴らし、尾を振って現われたのはムク犬であります。

「ムク」

米友は足を拭きかけた雑巾の手を休めて、ムク犬をながめました。

「雪が降ると手前も機嫌がいいな」

ムクは米友の前に膝を折って両手を突くようにして、米友の面をながめました。

「今、飯を食わせてやるから待っていろ」

米友は足を拭き終って、上へあがりました。

「ムクや、手前は良い犬だ、どこを尋ねても手前のような良い犬はねえけれど、やっぱり犬は犬だ、外を守ることはできても、内を守ることができねえんだな」

と言いながらムクの面を見ていた時に、ふと気がつけば、その首に糸が巻いてあって、糸の下には結び状が附けてあるのを認めました。

「おや」

と米友はその結び状に眼をつけました。してみればムクは食事の催促にここへ来たのではなく、この結び状を届けるためにここへ来たものとしか思われません。

「誰だろう、誰がこんなことをしたんだろうな」

と言って米友は不審の眉を寄せながら、ムクの首からその糸を外して結び状を取り上げました。

ともかくも、ムクを捉まえてこんな手紙のやりとりをしようという者は、米友の考えではお君のほかには思い当らないのであります。