Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,681 characters · 22 screens

Aozora Bunko

一

甚だ高慢臭くて恐縮ですが、少しく日記の中から筋を抽出し、小説風に潤色してお話を進めることにいたしましょう」

話し手のプロローグはこれで漸く終りましたが、宇佐美金太郎君の引用癖考証癖は、これで完全に打切られたわけではありません。

一

江戸の大火の恐しさは、関東の震火災から、ツイ先年の戦火災を御経験の方は、よくおわかりのことと思います。徳川時代にも幾度か恐しい大火がありましたが、そのうちで最もひどかったのは、明暦三年正月十八日、本郷丸山本妙寺から起った、いわゆる、振袖火事で、この因縁が怪談じみているのと、災禍の大きかったことは、まことに後人の肝を冷させるものがあります。

この時の延焼は八百余町に及び、江戸城の本丸、二ノ丸、三ノ丸を炎上し、焼死者実に十万七千人という数字です。その頃の江戸の人口は、恐らく五十万以上では無かったでしょうから、罹災等の比率は大変なものになります。その時引取手の無い死骸を本所牛島新田に埋め、その上に築いた伽藍がすなわち回向院――そんなことはもう講釈種で皆様よくご存じのことと思います。

宇佐美金太郎の話は、いよいよ大掛りですが、調子は少し講釈師染みて、要領よく聴手の注意を掴んで行きます。