Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,954 characters · 24 screens
一
一
話は、今から七十幾年前、明治九年の真夏に遡ります。――此の席には御存じの方も無いでしょうが、その頃まで、本所の五つ目に有名な蠑螺堂という羅漢寺がございました。初代広重の名所絵にも残って居りますが、その頃の五つ目は殆んど郊外で、田圃の中に建って居る螺線形のお寺は、なかなかに面白い恰好をして居ります。
その寺の五百羅漢は松雲元慶禅師の作で、関東では名作の一つとされて居りました。それよりも面白いのは、上り下りの堂の廊下の左右に安置した、五十体ずつ二列の百羅漢で、これは当時江戸の富豪大家が、親の冥福とか愛児の追善のために寄進したもので、一流中の一流の彫刻家――即ち当時の仏師に腕を揮わせたもので、自然競争の気味があり、仏師も寄進者も、費用も謝礼もお構いなしに、腕一杯の仕事をした、第一級の名品が揃ったのも当然のことであります。
だが、御存じの通り、日本の仏像彫刻は、飛鳥から天平、藤原時代から鎌倉あたり迄は非常に立派な芸術品も作られ、同じ観音様にしても、法隆寺の救世観音、百済観音、如意輪観音を始め、幾多の世界的名作が遺って居りますが、室町期から徳川時代へと、堕落の一途を辿り、わけても徳川の末期になりますと、匠気と脂粉の気が猛烈で、殆んど見るに堪えないものが多くなります。