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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,286 characters · 20 screens
五
「さア、帰ろう、家は何処だ」
頼門は四方に落ち散る娘の袷や帯を拾って来て、その肩へ掛けてやりました。
「有難う御座います、家はツイ其処――」
娘が指す方からは、浪人風の総髪の中老人が一人、息せき切って駈けて来るのです。
「桂、どうした、怪我は無いか」
「父上様、このお方に助けて頂きました」
「此お方に?」
それは遠藤主膳でした。相手はこれこそ真物の当国の城主の子金森出雲守と知る由もなく、この素裸の見事な美丈夫を、世にも不思議なものに眺め入っているのです。
五
腐った半纏は捨ててしまいました。娘父子を送って、その庵室に招じ入れられた出雲守頼門は、此処で腹拵えもし、髪形も直し、袷を借りて、漸く人間らしくなったことは言う迄もありません。
「お蔭で娘が危難を免れました。御身分の方と御察し申しますが、せめては名前をお明かし願い度い」
遠藤主膳の丁寧な挨拶に対して、出雲守頼門の答は不思議なものでした。
「何んの、――拙者は天下無祿の浪人者、土岐亥太郎と申す。山中にて賊に逢い、腑甲斐なくも衣類両刀まで奪い盗られてござるが――」
頼門の弁解は苦しそうでした。尤も土岐氏は金森家の祖先で、亥太郎は頼門の幼名、満更嘘を言って居るわけではありません。