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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,286 characters · 20 screens
八幡城に鎮座する、あの悪たれ殿様の御嫡と来やがる、――見てくれはちょいと良い男だが、百姓泣かせの厄病神に変りは無え、此処で打ち殺されるのも親の因果だ、ざまア見やがれ」
「――――」
熊の皮の胴服の男は、口汚く罵ると、山刀を一と揮り、沸り返る激怒のやり場に困ったらしく、側の手頃の立樹の幹を、発止と切り落します。
「待ちなよ兄哥」
半纏を被った男はそれを宥めるように、山刀を持った手を押えました。
「放って置け、お前は弱気でいけねえ、折角鳥寄せの真似をして、家来共を追い散らし、此処へおびき寄せた玉じゃないか、――煮て喰おうか、焼いて喰おうか、これからが楽しみだ」
「だがな兄哥、悪いのは殿様で、倅の出雲守様は、父親の無法な百姓いじめを、一生懸命に止めて居るという噂じゃないか」
若い半纏の男の言うのは尤もでした。郡上の城主金森兵部少輔頼錦は、徳川期の数ある暴君の中でも、暴歛苛法で有名でしたが、その暴政を寛和するために、長い間父親と争い続けているのは、その後取の出雲守頼門だったのです。尤も、親子といっても、頼錦と頼門は叔父甥の間柄で、弱気で善良な頼門は、名義上の父親――血の上の叔父なる頼錦の暴政には、困惑と羞恥と、少なからざる憤怒をさえ感じていたのです。