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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,286 characters · 20 screens
先ず先ず炉端へくつろがれるが宜い、夜が明けたら、早速麓の村まで送り届けて進ぜよう」
「忝けない、飛んだ御造作にあずかる」
一行のうちの年長けたのは、丁寧に挨拶しました。
「何んの、御遠慮は無用じゃ、――これよ、桂は居るか」
「ハイ」
隣の部屋に声を掛けると、唐紙をそっと開けて、半身を出して挨拶をしたのは、十八九の娘、――静かに挙げた顔を見て、
「――――」
五人の客は息を呑みました。灯に照らされたのは、左半面だけですが、ほんのりと霞んだ眉、大きい眼、鼻筋の柔かさも、唇の赤さも、実に非凡の美しさです。
木綿物の継の当った袷も、無造作に後ろで束ねた髪も、浅ましい限りですが、ほんの少しの身じろぎにも、自ら薫風が生じそうで、この娘の魅力はまことに比類もありません。
「お客様に夜食を差上げ度い、何が無くとも、先ず熱いものじゃ」
娘は静かにお勝手に退きました。
主人の中老人は、なかなかの弁舌で、昔は相当以上の身分のものらしく、文武両道の話など、五人の客も屡々受答に困るほどです。五人のうちの一人、最も若くて最も人品の優れたのは、微笑を湛えて聴き入るだけ、あまり口もききません。