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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,531 characters · 23 screens
六
京極三太郎は、泣き、悲しみ、怨みました。毎日毎日、矢留瀬苗子を責める、切々たる手紙を書いては、しかもそれを苗子に見せる前に焼いてしまったのです。
六
ところでその一方、夜の国の恋人、第四次元の世界の錦小路苗子との関係は、共鳴する二人の心臓の鼓動で、変圧所のダイナモのように大虚を震憾させて居りました。
それは無為にして化する恋でした。技巧も口説もなく、心から心に解け入って些かの間隙も、疑いも、食い違いも無い、実に玲瓏たる恋だったのです。二人の心が解け合ったばかりでなく、その肉体と肉体と解け合って、水素と酸素のように流れ、溢れ、湛えられたのです。
この場合たった一つの歎きは、地球の夜のあまりに短い事でした。かくの如き偉大なる恋人達が、雲雨の楽しみを尽すためには、少くとも、地球の自転を十倍遅くして、百二十時間の夜を持っても十分とはいわれなかったのです。
一度覚めて見ると、神聖なる恋人の矢留瀬苗子は、横里鯨之進と誰憚らぬ狂態を尽し、二人はもう恥も外聞も――いやお家のきつい法度に触れて、新聞社を首になる危険をさえ忘れて、朝から晩まで見せつけて居るのでした。