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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,195 characters · 22 screens
三
志津子夫人は、この展望台の上から、伊豆の海の種々相を描くのを、何よりの楽しみにして居る様子でした。
遠く下田に続く海岸の美しい線や、眼下に踊る波の姿や、いやそれよりも、岩の上に張り出した展望台の脚下、銀灰色の岩と、碧の海とが光線と水蒸気に依って千変万化する光の交響楽に対して、志津子夫人は異常な関心と興味とを持ち、それをカンバスの上に再現することに熱中していたのです」
三
話し手、倉繁大一郎の調子には、何にかしら異常なものがありますが、それだけに聴衆に訴える力には、容易ならぬものがありました。
「――喜田川志津子夫人の絵は次第に完成に近づくと、その熱心さは日毎に加わって、お天気さえ好ければ、毎日午前九時――朝の食事が了って一と休みすると、必ず展望台に出て、危うい欄干に凭れるように、眼下に展開する海と岩との、不思議な色調に吸い寄せられるように絵筆を動かすのでした。其神秘的な美しさは、朝の光の中に最もよく発揮され、昼近い陽が、展望台の影を岩から海へ落すと共に終るのでした。
画業の合間合間、志津子夫人の遊戯は、相当大胆に展開しました。最初は夫三郎氏を相手に、室内屋外各種の遊びがくり返されましたが、千束守がこの別荘へ来て、夫人の請うがまにまに長い長い滞在を始めると、夫人の遊び相手は、若くて新らしくて、そして夫人に取っ