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ぜにがたへいじとりものひかえ
奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選
野村 胡堂
Read 奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 31,249 characters · 62 screens
そんな事を言うのです。
「今晩主人の出た時刻を知ってるか」
「亥刻(十時)そこそこでした。お勝手のお仕舞が済んで、私は隣の三畳へ引揚げた時で」
「ほかの人は」
「番頭さんは店で帳合をしていて、うるさがって私などを寄せつけません。金三郎さんは店二階に早寝で」
「お万とかは」
「階下の御自分の部屋でした。旦那が妻恋坂へ出かけると、きまってブリブリしておりました」
「旦那とお万はそこへ寝むのか」
「ヘエ、土蔵の前の六畳で、――番頭の為之助さんが仕事のことで遅れると、裏二階へ床を取ります。今晩もお泊りの筈で、早くから私が床を敷きましたが」
店には主人の弟の金三郎が、店火鉢の火のないのに凭れて、この騒ぎの中に寝るわけにもいかず、ぼんやりしておりました。二十五六の道楽者らしいちょいと良い男で、これは後で聴いたことですが、お君にちょっかいを出しても、一向に通じないので、可笑しいほどヤキモキしているということです。
お君はまだ十八、源左衛門の弟の金三郎を、敵同士のように思っているのですから、これはどんなに骨を折っても通じないのが本当でしょう。
「金三郎さんと言ったね、お前はどう思う――御内儀さんの死んだことを」