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ぜにがたへいじとりものひかえ
奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選
野村 胡堂
Read 奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 31,249 characters · 62 screens
「よしよし、では始めますよ」
平次は人数の揃ったのを見ると、もういちど外へ出ました。離屋の死骸の前には家中の者が、固唾を呑んで『次の事件』を待っております。
暫くすると、合図もなく、欄間の蔀がスルスルと開きました。と見るや、ハッと思う人々の前、ちょうど死骸から三尺ほどしか離れていない壁へ、凄まじいものがサッと突っ立ったのです。よく見ると、それは、大身の槍の中心だけでした。穂先から中心の端までザッと二尺五六寸、柄から抜いたまま蔀の隙間から射込んだもので、射込んだと思うと、槍の穂は独りでに、元の欄間へスルスルと引上げられていくのです。
気が付いて見ると、槍の目釘の穴には、強靱な細い紐が結んであり、その紐に引かれて、槍の穂は欄間の蔀に引きあげられ、やがてそこから手が出て、器用に外へ引出してしまいました。
「あッ」
と言う間もありません、そのとき座の中から一人こそと逃出したものがあります。離屋の敷居を跨ぐと同時に、
「御用だッ」
八五郎は蛮声とともに、ガッキと組付いたのです。
さんざん揉み合った末、八五郎に縛られたのは、主人ではなくて、なんと番頭の為之助。
「この野郎は、内儀さんが離屋の床下に入れて、生命がけで守っていた一万両の隠し場所を嗅ぎつけ、母家の二階に戸板に仕掛けた弓を持ち込み、槍の中心に、紐をつけて射込んだ