Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Read 季節のない街 (きせつのないまち) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 201,379 characters · 394 screens

Aozora Bunko

と手をあげた。

「いいとこへ来てくれた、まああがってくれ」

「おらあそんなきげんじゃあねえ、おめえに聞いてもれえてえことがあって来たんだ」

増田はあがって、夫婦の脇へどかっとあぐらをかいた。顔は赤いし眼も赤いし、息は腐った熟柿のような匂いがした。

「まあ一杯いこう」と河口は持っていた湯呑を、ちゅっと啜ってから差出した、「そのうえで話を聞こうじゃねえか、どうしたんだ」

「どうもこうもねえや」良江の注いでくれた酒を、水でも呷るように飲んで、増田は云った、「どうもこうもありゃしねえ、うちのすべたあまのちくしょう、おらあまるでのら犬がシャッポをかぶされたような心持だ」

「ふーん」河口は首をかしげた。

「云っちゃあ悪いが、めしを食らってるときに頭から、ぱいすけ一杯の砂をぶちまけられたような気持だぜ」

「ふーん」河口はあにいの心持を推察し、推察する限りにおいて、事情の複雑さ――具体的にはまだなにもわからないにしても――に深く感動した、「いつもながら、あにいのところはむずかしいな」

「お勝さんも気が強いからね」良江は増田に酒を注いでやりながら云った、「気性はいい人なんだけども、かっとなるとかっとなっちゃうのね」