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かんえいぶどうかがみ
寛永武道鑑
直木 三十五
Read 寛永武道鑑 (かんえいぶどうかがみ) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,633 characters · 26 screens
一
桜井半兵衛は、門弟に、稽古をつけながら
(何故、助太刀を、このわしが、しなくてはならぬのか?)
と、その理由を、考えていた。烈しく、突出して来る門弟の槍先を――流石に、修練した神経で、反射的に避けながら、声だけは大きく
「とう」
と、懸けはしたが、何時ものような、鋭さが――門弟が
(病気かしら)
と、疑うまでに、無くなっていた。そして、羽目板の所に立ったり、坐ったりしながら、囁合ったり、汗をふいたりしている門弟をみても
(わしの事を噂しているのではないか)
とか
(わしを、非難しているのでは、有るまいかしら)
とか、考えるようになった。そして、そうした疑を、門弟にさえ持つようになった自分の心の卑しさを
(意気地無しが――)
と、自分で、叱りながら――然し、では、何うしていいのか、それは判らなかった。
(河合又五郎の妹の婿故、助太刀に出なくてはならぬ。何故かなら、縁も無い旗本が、あれだけ援助しているのに縁につながる者が、出ぬ筈は無い――尤もらしい言葉だ。然し――又五郎の殺したのは、数馬の弟の源太夫では無いか? 弟の仇を討つ――そういう法は無い筈だ。もし荒木と、数馬とが、その法を無視して、又五郎を討つなら濫りに、私闘を行った罪として、処分されなくてはならぬし、この明白な事を知りながら、助太刀に出たわしも、処分