Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
やまをおもう
山を思う
石川 欣一
Read 山を思う (やまをおもう) by 石川 欣一 (いしかわきんいち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 79,814 characters · 157 screens
シガレットに火をつけると同時に、太陽の光が極めて強いのに似合わず、空気は霜を含んで恐ろしく寒いのに気がついた。と見る、ヴェランダからだらだらと傾斜した芝生。芝生に接してコンクリートの大道、それから長い草の原がちょっと見えて、あとは一面に乳白色の霧である。霧の上に岩と、茶褐色の草とに掩われた山巓が浮き上るのは、恐らくベン・ベニュウであろう。
前の晩、暗くなってから着いたのだから、実は何が何やら判らぬ筈ではあるが、旅に馴れた身の、ベッドの中でトロサックスの地図を開いて、いさゝかあたりの地理を調べて見た。それによると、この乳白色の濃霧は、アクレイ湖の上に漂っているのに相違ない。九時半、十時、十時半と、太陽が昇るに従って霧が散り、やがて美しい秋晴れになるのであろう。だが、あの、往来の向うの草の中で動いているのは、一体何だろう?
両手を上衣のポケットにつっこんだ儘、私はヴェランダを下りた。芝生を横切って道路に出る。もう靴は露で濡れている。道路の向うの原には……足を踏み込む気がしなかった。長い、膝位までは充分ありそうな、枯れた羊歯に露と、それから針の様な霜とが一面に着いている。