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やまをおもう
山を思う
石川 欣一
Read 山を思う (やまをおもう) by 石川 欣一 (いしかわきんいち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 79,814 characters · 157 screens
・ランド、攻めるに難い上に、この丘陵の上から豊富に清水がわき出すのだから、いざ籠城という時にも至極便利だったろうと思う。今でも昔ながらの碁盤目の街路、何度も大火はあったが、このプランだけは変っていない。このような真直な通の一つを、ものゝ一丁も行くと、もう急坂だ。それを下り片品川をあぶない吊橋で渡って糸井の部落まで一里。散在する家々は養蚕で忙しく、初夏の静かな空気にさわさわと蚕が桑をかむ音さえ伝わる。この青空、赤城山、桑の広葉、黒く赤い漿果! われわれは塵をあげて路を急いだ。
こゝに清雲寺という禅寺がある。迦葉山にある龍華院彌勒寺の末寺で、非常に背の高い萱葺の山門があり、その前の、普通葷酒の山門に入るを禁ずることをきざんだ石には、筆太に「禁芸術売買」としたのがきざんである。かゝる文句が諸方の寺にあるものか、またこれが仏教の方で果して如何なる意味を持っているのか、寡聞にして知らぬが、これをこの文字通りに解釈して、さて何かしら頭をなぐられたような気持にならざるを得なかった。
この附近にも水のわく段丘があり、われわれはそこで蚊に刺されながら指で地面をひっかき廻した。