Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ひらがげんないとりものちょう
平賀源内捕物帳
久生 十蘭
Read 平賀源内捕物帳 (ひらがげんないとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,159 characters · 39 screens
十六日の朝景色
薄い靄の中に、応挙風の朱盆のような旭がのぼり、いかにもお正月らしいのどかな朝ぼらけ。
出尻伝兵衛、またの名を「チャリ敵」の伝兵衛ともいう、神田鍋町の御用聞。
正月の十六日は、俗にいう閻魔の斎日。
商売柄、閻魔参りなどに行く義理はない。
谷中の方にチト急な用があって、この朝がけ、出尻をにょこにょこ動かしながら、上野山内の五重の塔の下までやってくると、どこからともなく、
「……おい、伝兵衛、伝兵衛」
チャリ敵の伝兵衛、大して度胸もない癖に、すぐ向ッ腹をたてる性質だから、たちまち河豚提灯なりに面を膨らし、
「けッ、なにが伝兵衛、伝兵衛だ。大束な呼び方をしやアがって。……馬鹿にするねえ」
亭々たる並松の梢に淡雪の色。
ぐるりと見廻したが、さっぱりと掃き清められた御山内には、人影らしいものもない。
「な、なんだい。……たしかに、伝兵衛、伝兵衛と聞えたようだったが……テヘ、空耳か」
ぶつくさ言いながら歩き出そうとすると、また、どこからともなく、
「伝兵衛、伝兵衛……」
あわてて見廻す。やはり、誰もいない。
伝兵衛、タジタジとなって、