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ひらがげんないとりものちょう
平賀源内捕物帳
久生 十蘭
Read 平賀源内捕物帳 (ひらがげんないとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,159 characters · 39 screens
船弁慶の知盛の霊でもあるめえし、抜身を持った幽霊なんてえのは、当今、あんまり聞きませんからねえ)
出尻伝兵衛、したり顔で偉らそうな口をきいたが、この差出口はまるで余計なようなものだった。
仮にそうだとすると、血の痕がずっと藪下の方から続いていなければならぬ筈だが、足跡の上には、紅梅の花びらほどの血も落ちていないのだから手がつけられない。与力の橋爪左内にあっさりとやり込められて、伝兵衛、赤面して引き退った。
すったもんだはあったが、結局、どうして殺されたのか判らずじまい。ふしぎなこともあるもんだな。で、チョン。
尤も、身許の方はすぐわかった。近江屋という伝馬町の木綿問屋の末娘で、初枝という十八になる娘。
源内先生いうところの気憂病。暮から根津の寮に来ていて、寝たり起きたり、ぶらぶらしていた。
ちょうど七ツ頃、雪が止んで、クワッと陽が照り出したのを見て、ちょっと、と言って、行先も告げずに寮を出た。それで、こんな始末になった。
ところで、それから四日おいた同じく正月の八日。こんどは、日暮里の諏訪神社の境内で、同じような事件が起きた。
富士見坂の上、ちょうど花見寺の裏山にあたるので、至って見晴しのいい場所。