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しそうとしてのぶんがく
思想としての文学
戸坂 潤
Read 思想としての文学 (しそうとしてのぶんがく) by 戸坂 潤 (とさかじゅん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 209,809 characters · 408 screens
三
)などを引き出す権利は生じて来ないように、風刺の文学が直ちに「風刺文学」になるのではない。
尤もこういうと読者は、現に近代文学において風刺文学なるものがあるではないか、と反駁するだろう。モリエールはどうか、ゴーゴリはどうか、というだろう。だが大事な点は、こうした所謂風刺文学の巨匠は、風刺に文学というマントをかけたのではなかった。まして真面目な現実を風刺に書き改めたのでもなかった、ということである。彼等は単に――そういっていいなら――現実をリアリスティックに文学的につかみ出した迄だ。夫が彼等にとって風刺となったとすれば、夫はいわばリアリティー自身の責任であって彼等の責任ではない。
三
私は反問しよう、ダンテの神曲(聖劇ではなくて人間又は社会の批判劇だから喜劇という名がついている)は、果して風刺文学だろうか。フランチェスカの不義の恋を風刺するために、ダンテは彼女を地獄の空に永久に飛び疲れさせているのだろうか。もし風刺だとすれば、それはつまり象徴的な真理の一結果だからではないのか。ストリンドベリは女と家庭とを風刺したのだろうか。風刺だとすれば、それを風刺しようとしたからではなくて、単に真実をつかみ出したからのことではないか。