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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Read 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) by 小酒井 不木 (こざかいふぼく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,140 characters · 396 screens
その証拠に、この中には、切り端が、遊離端の方へ行って、つまりあべこべに束ねられた毛がある。こんな風に二三本ずつ切って、これだけの太さの束にするには、よほどの時間がかかるだろう」
「沢山の女から切り集めたのではないでしょうか?」
「いや、みんな同じ人の毛だ」
朝井刑事はめずらしそうに、髢を手にとって、現場に落ちていた二本の髪の毛と較べた。
「この毛とこの束の毛とはちがいますね?」
「全くちがう」
「何だか、今度の犯罪は変態性慾が中心となって居るようですねえ。あの咬傷も作虐色情狂のつけたものではないでしょうか?」
「そうかもしれない」
「では大原は断髪の店員に噛まれたのでしょうか」
「それは、その女に逢って訊問して見ねばわからない。だが君、あのクロロフォルムの罎をどう考える!」
「大原がこの手巾を握って居ましたから、大原はこれで女を麻酔させようとしたのでしょう」
「女を麻酔させて自分が女に咬み殺されるとはおかしいねえ」
「では、麻酔をかけたのは女の方でしょうか?」
「けれど手巾は大原が握っていた」
「恐らく麻酔をかけて咬みころし、警察の眼をくらませるために、手巾を大原の手に握らせたのでしょう」