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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Read 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) by 小酒井 不木 (こざかいふぼく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,140 characters · 396 screens
二
「平岡貞蔵と申します」
「年齢は?」
「二十五になります」
「住所は?」
「巣鴨宮仲○○番地です」
「よろしい、その袖の血はどうしてついたかね?」
「どうしてついたか存じません」
「昨夜君は夜遅く何処へ行ったのかね?」
「散歩に出たのです」
「君は『人殺しーい』と言って走ったそうだが、誰に追いかけられたのかね?」
「誰だか存じません」
「君は指ヶ谷町に昨夜人殺しのあったことを知って居るかね?」
「存じません」
霧原警部は、うつむき勝の男の胸をじっと見て居たようだが、その眼は異様に輝いた。傍に居た朝井刑事は、警部が早くも何か重要なことを見つけたなと感じたが、意外にも警部は、
「今はこれだけにして置こう」と言った。
すると男は、
「どうか早く帰らせて下さい」と歎願した。
「まだいけない。…………」と警部はきっぱり言い切った。
男が去ると、警部は朝井刑事に向って小声で命令を伝えて居たが、やがて立ち上って云った。
「それでは僕はこれから大学へ行ってくるから、今言った方面を宜しく頼むよ」
二
死体解剖の結果、致命傷は、背部の刺創で、右肺が深く傷つけられて居たために、内出血を起して死んだものとわかった。