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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Read 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) by 小酒井 不木 (こざかいふぼく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,140 characters · 396 screens
この条理を尽した言葉に、康雄はもう沈黙して居ることの不可能を悟った。
そこで彼は、昨夜の冒険について、逐一物語ったのである。新栄町の芳香亭を出てぶらぶら歩いて来ると、突然、ある街で女の悲鳴が聞えたこと、その街の名が富倉町であることを彼は知らなかったこと、悲鳴をきいて立ちどまると、間もなく一人の女が、あわただしく駈け出して来て、彼にすがりついた事、彼は女を半ば引摺りながら、丸太町通りまで引き返して、道ばたで介抱して居ると、ちょうど一台の空自動車が来たので、呼びとめて、わが家へ連れて来た事、とりあえず寝台に横たわらせて、冷水を与えると、女ははっきり意識を恢復したが、いたく疲労して見えたので、あくる日事情をきこうと思って、そのまま寝かせて、自分も隣室へ退いて眠った事、今朝十時頃に眼をさまして見ると、女の姿が見えなかったこと、寝室へはいってよく探すと床頭台の上に、鉛筆で走り書きをした置手紙がしてあったこと、等を順序正しく語って、最後に女の残して行った手紙を刑事に示した。もうその時は、室内はだいぶ闇くなって居たので、康雄は立ち上って、スイッチを捻った。
刑事は熱心に手紙を読んだ。