Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Read 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) by 小酒井 不木 (こざかいふぼく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,140 characters · 396 screens
「何?」と男は眼を据えて一歩近づいた。
「うむ、中々威勢があるね。だが君、短刀を持って来なかったのは、かえすがえすも君の手落だよ。何だったら、看護婦を呼んで短刀を借りたらいいだろう。というのは、その毒では到底僕を殺し得ない理由があるからだ。僕はその理由を聞かせてやりたいが、君のその女々しい心が憎いから、聞かせてやらぬのだ」
立って居る男の憤怒は絶頂に達した。彼は歯を鳴らし、手をふるわせて、床頭台上の水瓶から、傍のコップに水を移し、手早く小壜の中から丸薬を取り出し、その一粒をベッドの男の口に投げるように入れ、次いでコップの水を注ぎこんだ。
ごくりという音がした。
立って居る男は暫くの間、じっと相手の顔を見つめた。
病人の眼元には微笑が浮かんだ。
「君、君はなぜ、のまぬのだ。やっぱり君の話は嘘だったのか」
男は黙って残りの丸薬を口に入れ、残りの水でぐっとのんだ。
二人は暫くの間、顔を見合わせて、各々相手の様子をうかがった。苦しい沈黙が室内を占領した。
五分間!
ベッドの男は眼の色をかえなかった。突然、立って居る男がよろよろと動いて、その身体をぶるっと顫わせたかと思うと、はげしい苦悶の色がその顔に漲った。