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かいいくろひめおろし
怪異黒姫おろし
江見 水蔭
Read 怪異黒姫おろし (かいいくろひめおろし) by 江見 水蔭 (えみすいいん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,963 characters · 26 screens
真田幸村の弔い合戦、それが主でもあったけれど、第一には徳川の天下が余りに横暴に過ぎるので、それが癪に触ってならぬのであった。
その徳川幕府を倒壊させるには、浪士を集めて兵力で争うという、そうした武的手段を取るとするには、余りに自分が貧弱であるという事を、さすがに能く知っているのであった。
「煎じつめれば金じゃ。金の力で徳川の天下を滅茶滅茶に掻き乱してやりたい。自分で天下を取ろうとは毛頭考えぬ」
黒姫山下から金塊を取出したら、それを運用して破天荒の奇策を弄し、戦わずして徳川一門を滅亡させる考えで有ったのが、その黄金の一部分の有個所が漸く知れた時には、最早や余りに老過ぎて、その健康は衰え切っていた。それで滝之助に向って、単に高田の松平家というような、一枝葉に拘泥らずして、大徳川一門に向って怨恨を晴らせ。自分の志を受継いで、今の天下を掻き乱してくれという、そういう希望を述べたのであった。
滝之助は一も二もなく承知した。
「必らず先生のお志を継ぎ、蔭で機密に仕事をして、徳川家を呪いましょう」
「おう、それで拙老も安心じゃ」
朝露夕電、人の命は一刻の後が分らぬ故、今夜のうちに何もかも教えようとなった。