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かいいくろひめおろし
怪異黒姫おろし
江見 水蔭
Read 怪異黒姫おろし (かいいくろひめおろし) by 江見 水蔭 (えみすいいん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,963 characters · 26 screens
「霧隠れ雲隠れ、と申しても、つまりは火遁の術、煙遁の術、薬品にて煙を急造し、目潰しを大袈裟にするまでじゃ。その薬法は予て記して置いたが、それよりも、眠り薬を巧みに用いれば、宿直の者も熟睡して、その前を大手を振って通っても見出されぬ。つまり姿を消したも同然じゃ。その製法、矢張、記してある」
笑い薬、泣き薬、長命不死の薬、中には遊戯に過ぎたる薬まで、残らず記した秘本をくれた。
それから、印籠の二重底から取出した切図三葉をも譲られた。いずれも雁皮の薄紙に細かく書いて有るのであった。
「や、や、あの山神の祠の台座、後面の石垣のまん中の丸石を抜き取ると、その下が抜穴、そこに佐渡の金箱が隠して有るので御座りまするか」
「おう、その通りじゃ、あそことは実は気が着かなんだよ」
「早速、今夜にも参りまして」
「おう、取出して多年苦心の拙老に早く安堵をさしてくれ」
「かしこまって御座りまする」
滝之助は闇の山路を却って幸いに、ただ一人にて探しに行った。
果して山神の石祠の下に、抜穴が深く通じていた。その突当りの処に、部厚の槻の箱が三箇隠して有った。十二貫目の一箱をとても滝之助に持てそうが無かったので、その三分の一だけを、それすらも漸く持ち帰った。