Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いよくのちっそく
意欲の窒息
豊島 与志雄
Read 意欲の窒息 (いよくのちっそく) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,737 characters · 8 screens
文化が新らしい方向を辿らんとする時、その派生的現象として、社会の或る部分に停滞腐爛を起す。大河の流れの中に、小さな淀みが処々に生ずるようなものである。流れと共に動こうとしても、河床や河岸の一寸した影響のために、一つの岩石のために、そこに淀んでしまう。そしてその中で、動く意志さえも無くなってしまう。文化の進展を欲する者が必然に起す種々の意欲は、何等かの理由による停滞のために、そこで窒息してしまうのである。
そういう意欲の窒息を、少し古いが、ゴンチャロフはオブローモフに於いて描出した。オブローモフは、数多の農奴を所有する富裕なロシアの貴族である。そして始終彼は、毛布のなかにもぐりこんで、微温と微睡とのうちに時を過している。何かの行動に当面すると、「何のために?」という考えが最初に出てくる。「何もかも面倒くさい。」というのがその結論である。彼は立派な教育を受けて、いろんなことを考えてはいる。然しやがて、何もかも面倒くさくなってしまう。
「高尚な願望の与える歓びも、彼に感じられないのではなかった。人類の不幸も彼は見ていた。時には人間の悲哀を想って、心の底で激しく泣き叫んだ。