Japanese reading practice

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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

Read 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) by 林 芙美子 (はやしふみこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 103,349 characters · 207 screens

Aozora Bunko

下谷の家

やっぱり国へかえりましょう。

透徹した青空に、お母さんの情熱が一本の電線となって、早く帰っておいでと呼んでいる。

不幸な娘でございます。

汚れたハンカチーフに、氷のカチ割りを包んで、私は頬に押し当てた。子供らしく子供らしく、すべては天真ランマンと世間を渡りましょう。

下谷の家

一月×日

カフェーで酔客にもらった指輪が、思いがけなく役立って、拾三円で質に入れると、私と時ちゃんは、千駄木の町通りを買物しながら歩いた。

古道具屋で、箱火鉢と小さい茶ブ台を買ったり、沢庵や茶碗や、茶呑道具まで揃えると、あと半月分あまりの間代を入れるのが、せいいっぱい。

原稿用紙も買えない。

拾三円の金の他愛なさよ。

白い息を吹きながら、二人が重い荷を両方から引っぱって帰った時は、十時近かった。

「芙美ちゃん! 前のうち小唄の師匠よ、ホラ……いゝわね。」

傘さして

かざすや廓の花吹雪

この鉢巻は過ぎしころ

紫にほふ江戸の春

目と鼻の露路向うの二階屋から、沈みすぎる程、いゝ三味線の音〆、細目にあけた雨戸の蔭には、灯に明るい、障子のこまかいサンが見える。

「お風呂明日にして寝ましょう……上蒲団借りた?」