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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
Read 新・平家物語 (しん・へいけものがたり) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 123,012 characters · 245 screens
『平太。出仕がおくれるぞ。朝は、すがすがと出かけるがいい。……ことには、大事な、御幸のまえ』
『お気色を損じたらおゆるしください。――行って参ります』
清盛は、家を出た。父が退いた後も、かれのみは、日々、院へ出仕していた。――父の籠居も、以前の引っこみ思案とは趣きがちがい、こんどは何か、不屈な眉色が見える。朝なあさな、その父を信じて、清盛は足を踏みしめた。
洛南の伏見竹田は、上皇がお好きな離宮の地であった。桂川、加茂川、二水の景を一庭にとり入れて、鳥の音も幽かに、千種の姿もつつましく、あるがままな自然を楽しむのみならば、四季、いつということもない。
が、上皇は、ここになお、一精舎を、建てられた。そして本尊に、御自身の念持仏――胸に卍の彫ってある阿弥陀如来像をおさめて――今生の衆生の結縁と、来世の仏果のために施与せんというのが、安楽寿院創建の御願とされるところらしい。
世に「白河の侫仏政治」といわれたほど、さきの白河天皇は、仏事にふけり、高野への行幸は四回、熊野へ八回、伽藍の建立や、諸寺へ寄せた仏像仏画、七宝塔小塔などのことは、一代、おびただしいものであった。