Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
Read 新・平家物語 (しん・へいけものがたり) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 123,012 characters · 245 screens
祝杯
わあっと、そのとき、どよめきが揚がった。勝負木の下では、勝ち鼓の音と一しょに、あいずの紅い旗が振られている。院の紅組が勝ったのである。上皇をめぐる凱歌が高い。
『や。……じゃあ、また、後で』
清盛は、それを機に、渡と別れて、桟敷のほうへ、人波をわけて行った。泰子のひとみは、かれの姿を、手繰りよせるように、見まもっている。――清盛は、そばまでは、寄らなかった。
(――来たの。平太)
かの女は、そういわないばかりな顔つきである。本能は、母を慕い、感情は、反抗と憎みをこめて、ねめつけて来るかの女の子だった。けれど、清盛のその眸は、とたんに、羞恥みと変じ出した。ほおも、大きな耳たぶも、急にまっ赤にさせてしまった。特に異性を意識するとき、かれがよくやる正直な戸まどいなのだ。母は決して、異性ではない。母の美しさは、かれには、無価値である。憎みでこそあれ、無価値である。
祝杯
『おかしな子よの……』と、母の泰子は、もじもじしている清盛を笑った――『なにを、羞恥ましゅうしていやる。わが身は、そなたの母ではないか。もそッと、寄って来たがよい』
母なる者でなければ決して現わし得ない愛情の波紋が、そういって、手招く人のホホ笑みにゆらいだ。