Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

Read 新・平家物語 (しん・へいけものがたり) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 123,012 characters · 245 screens

Aozora Bunko

『そうか。なんといっておいてくれたぞ』

『かりにも、大殿へ、うそをつく木工助のせつなさを、すこしは、お察しくださりませ。……堀川の叔父御さまのおやしきにて、和子様には、御腹痛で寝ておられました。……やがて、御腹痛もおさまれば、夜明け次第、お帰りに成られましょうと、かように、お答えしておきました』

『すまないすまない。じじ、かんべんしてくれやい』

厩の横の白梅が、氷の粒みたいに、夜空に滲みを描いていた。つんと、冷たい梅の香気にも衝かれて、清盛は顔を皺めた。……そして、涙が、木工助の肩へこぼれた。

いつのまにか、清盛は、じじの肩に、抱きついていたのである。木工助は、主君の子にそうされて、恐懼にかたくなっていた。だが、枯木のようなかれの肋骨の下にも、やがて烈しい感情が波打っていた。性来、泣き虫で多情な清盛の熱いものと、日ごろから、包みにつつみ、抑えにおさえていた老骨の中のものとが、弾みを得て、どっと、どっちも理性を破って、一しょに嗚咽し出した。ついには、声をあげて、ひとつ体みたいに、抱き縒れたまま、地へ、すわってしまった。

『わ、和子様よ。あなたは……あなたは、このじじを、さまで、お力に思ってくださいますか』