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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens
とにかく、このへんの章は読者も中古大陸の民土を念頭におかれて、風誦するが如く、共に空想を遊ばすことにしておいていただきたい。
「戴院長。今日でもう七日目ですぜ」
「もう七日か。はて、知れんなあ」
「いくら雲霞に乗って、こう空ばかり素ッ飛んでみたところで、これじゃあ、知れッこありませんや。毎日毎日、下に見えるのは、山岳だの大川だの渺々とした田舎ばかり。ちッたあ、人里へも出てみなくッちゃあ」
「きさまのいうのも一理はある。だが、公孫勝は元々薊州の生れで、梁山泊へは入ったものの、田舎の母恋しさに山寨の仲間に別れて、一時郷里へ帰った者だ。それに彼のごとき修道者であってみれば、市井に住まっているはずはない」
「ですがねえ院長、薊州の田舎ときたら、山また山だ。そんな山の襞にいる一人の人間をつかまえるなんてことあ、まるで縫い目の虱をさがし出すより大変ですぜ。やっぱり人を探すには人中を歩かなくっちゃあ」
「きさま、そろそろ美味い物でも食いたくなってきたのだろう」
「そいつも察しておくんなさいよ。いくら精進潔斎だって、この七日ほどは、干団子しか食ッちゃいません。きのうからもう目が眩りそうなんで」