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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens
「……林ニ遇ウテ起リ、山ニ遇ウテ富ミ、水ニ遇ウテ興リ、江ニ遇ウテ止マラム。……四遇ノ変転ハ身ニ持テル宿星ノ業ナリ。魯智深、まずは生きるままに生き、行くがままに行け」
「はい。じゃあ、そういたしましょう」
「さし当って、身の落ちつく先もなくては困ろう。わしの弟弟子は昨今、開封東京の大相国寺にあって、智清禅師と衆人にあがめられておる。この添書をたずさえて、大相国寺へまいり、よう禅師にすがってみるがよい」
「どうも何からなにまで、ありがとうぞんじます。……ではお名残り惜しゅうございますが」
と、彼が神妙に頭をさげると、侍座の役僧たちはみな笑った。「……なにがお名残り惜しいものか」と、彼の退散に、胸撫で下ろしていたからだろう。
さて。――その日。智深は悄然と麓町へ降りていった。そして、鍛冶屋の隣の旅人宿へ泊りこんだ。さきに鍛冶屋へ誂えておいた錫杖が出来上るのを待ったのだ。そしてやがて半月ほど後に、その出来栄えが見られた。重さ六十二斤水磨作りの錫杖は上々なものだった。
「ようし、この一杖さえあれば、天下の山川草木は、みなわが従者」
彼はたちまち、ここ数日の鬱を眉に払って、大満悦な態となり、すぐさま開封東京へさして出立した。