Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens
にいたことなので、一夕の歓談に一夕を忘れ、またつい、夜を語り明かして飽かない夜が、毎日延々と心にもなくつづいたようなわけだった。
かたがた、宋江や呉用が、あらゆる言辞で、彼の足どめ策を講じていたのもいうまではない。
だが、ひとたび、北京にある留守の妻を思い、ここに潜む魔力みたいなものをかえりみると、
「ああ、これはいかん。わしの意志が弱いのだ。決然と魔魅の袂を払わぬことには」
と、身の在る所にゾッとして、帰心、矢の如きものに襲われもする。――
家を出たのは晩春五月まぢか。いつか、月日は過ぎて、天地は秋の色だった。
そこで彼は、一詩を書いて、宋江にみせた。どうか帰してくれと改まって切に懇願したのである。
晩春 家郷に別れて いま新秋
朝に家を想い 夜には妻を恋う
恨むらく 身に双翼のなきことを
天風よ 吾を憐んで 水涯を渡せ
「いや、このご心情を見てはもう……」と、宋江は言った。
「これ以上は、おひきとめもなりますまい」
最後の大饗宴をひらいて、莫大な金銀を餞別に贈り、翌朝、全山を挙げて、いよいよ彼を送別することになった。
「家に帰れば、不足なき身、おこころざしはいただきますが、金銀財帛はどうぞ、そちらのお手もとに」