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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens
と、二十両ほど、彼に渡し、また傍らの端公たちにも、小粒の銀子を投げ与えて、
「やい、牛頭馬頭」
「へい」
「あしたから、この花和尚がいねえからって、またぞろ師範に酷いまねをしやがると、きかねえぞ。どうせてめえたちも、お役がすめばすぐ開封東京へ帰るンだろう。よくわが輩の顔を覚えておけよ」
「わ、わかり過ぎるほど、わかっておりまする」
翌朝、木賃の軒を出ると、智深はかさねて、林冲に別れをのべ、風のごとく、開封東京の空へ引っ返していった。
その日、一行は滄州の県内に入った。
次の日である。はや何となく、部落も郊外のさまを思わせ、道に見る村娘の姿やら童の群れも、人里くさい賑わいが濃くなっていたが、やがて、村の用水川らしい石橋の附近まで来ると、
「おお、おお。柴家の大旦那が、狩猟からお帰りとみえる」と、そこらの河畔で川魚をとっていた男女も、畑の物を手車に積んでいた百姓も、みな道の端によって、なにやら地頭の行列でも迎えるようなさまだった。
端公の一人が、土地の者に訊いていた。
「そこの石橋の彼方に、豪勢な長者屋敷の門が見えるが、あれが柴家というのかね」
「へえ。おまえさん、柴進さまを知らないのかい。