Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens
「……ああわかった。目玉に油を塗られたトンボみたいに、あの黒二(宋江のあだ名の一つ)が、きりきり舞いして出て行ったから、腹立ちまぎれに忘れたんだわ。……いいわねえこれ。そうだ張三にやって、よろこばしてやろう」
持って寝て、寝ながら愉しげに蘭燈の明りで中を調べ初めたものである。見ると、鸞帯の中には、かの短刀、かの十両、さらに書類袋のうちからは、梁山泊の晁蓋から彼に宛てた書面まで現われてきた。
まだ封も開いてないそれを、女は小指の爪で器用に剥がしていった。――梁山泊がどんなところかは、三ツ児でも知っている。去年はこの土地で大捕物の騒動もあったほどだ。彼女は、息をつめて、繰り返し繰り返し読んでいた。……ところへ、みし、みしと、忍びやかに上がって来る足音だった。彼女はあわててそれらの物を鸞帯(胴巻)へおしこみ、腹の下に抱いて、そら寝入りをつかっていた。もちろん、その足音は、宋江だった。悄然として、しかも下タ手に、
「……おや、見えないが。……ああわかった、婆惜、おまえが仕舞っておいてくれたのか」
「だれ? うるさいわね、また」
「ちょっと、起きてくれないか。忘れ物をしたのだ。