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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens
だった。
「……おおこの絵燈籠はおもしろい。芙蓉燈籠、れんげ燈籠、百合燈籠、白牡丹燈籠。これも街の衆が、筆を競ったのか。……玉梅の図、金蓮の意匠、とりどり余技とも思えんな」
宋江は人波の中に揉まれながら、官邸の者二、三を連れてのそぞろ歩きに、
春の月 いそぐなかれ
人の子ら 惜しむこの夜を
火光樹 並木をなして
虹の花 地に星橋を架す
わするなり 人みな人の世の火宅を
と、彼には珍らしい微吟を口誦さみなどしつつ、浮き浮きと見物して廻っていた。
するうちに、烈しい人渦に巻き込まれ、われにもなく、一門の内へ入っていた。道化踊りの一群と、それにくッついて歩く群集の中にいたのだ。そして宋江も周囲の男女とともに、道化踊りに気をとられて、笑いこけた。時に余りなおかしさには、老幼とともに手を叩いて喝采した。
ところが、後ろの一段高い桟敷にあって花燈の映えを横顔に、玉杯をあげていた綺羅美やかな人々があった。これなん文官の劉長官夫妻であったのである。「……オヤ?」と、眼をみはったのは夫人のほうで、
「あなた! ……」と、袖を引っぱって、
「ほら、あの色の黒い、すらっとした男がいま、手を叩いて笑っているでしょう。