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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens

Aozora Bunko

聚議庁から山じゅうは、楽の音になった。

女たちや年寄り連れの家持ちには、それぞれ山裏の谷にある土の家が与えられ、その日は夜へかけての祝宴だった。

その祝宴中のこと。

当然ながら、宋江のうわさも出る。

そして、宋江が、老父の死の報らせに会い、ついにこれへ来なかったはなしを聞くと誰もが、

「ああ、あの人らしい」

と、その孝心にひとしく嘆声をもらし合った。

また、清風鎮の一件では、聞く者みな血を沸かし、ひいては、花栄が弓の名人たる話も出たが、これには晁蓋はじめ、呉用も林冲も、耳を外らした顔していた。――この顔ぶれの中で、武芸自慢などは、ちとおこがましいといった空気でないこともない。

あくる日。

花栄以下、新参加の九名は、晁蓋やほかの面々にみちびかれて、梁山泊一帯の木戸や地形、隠し砦などを一巡してあるいた。

折ふし、春靄の江山江水は、絵のようだった。そして時々耳には、

キロロ、キロロ……

と帰る雁の声が聞え、仰ぐと、竿のような雁の列が、しばしば水の彼方へ消え去った。

「どなたか、弓をお貸しくださらんか」

花栄がふと言い出したので、

「これでおよろしいか」

一人が携えていた弓を与えた。