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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens
「申しおくれました。お察しのとおり、自分は宋江です」
「ああ、やはりそうでしたか。いかがでしょう。望外なことですが、はからずご高風にふれたご縁を、これなりでは何やら惜しまれてなりません。……どこかそこらの小酒屋で、ご中食でもともにしていただけますまいか」
「ちょうど午どきですから、わしはかまわぬが」と、端公たちにはかると、李万、張千ももとより異議はない顔つき。
で、その四人づれは「ごめんよ」と、一軒の小酒屋の内へはいって行った。ところが、店の亭主はにべもない。肴、飯、酒、何をあつらえても、けんもほろろにお断りである。わけを訊いてみると、こうだった。
「おまえさんたちはたった今、そこの辻で、江州の三覇といわれる顔役のひとりと喧嘩しなすッたろうが。いやはや、あぶねえもんだ。つね日頃でも、あの一覇(顔役)ににらまれたら、こんな店ぐらいはすぐ叩き毀されちまう。今もここらを呶鳴り廻って行ったのさ。野郎たちに腰かけでも貸すこたアならねえぞ、物も売るなってね」
さてはそうかと、四人は笑って出たが、どこへ行っても、同じように寄せつけてもくれないのだ。で、ぜひなく病大虫の薛永とは道でわかれ、わかれ際に、宋江はさらに銀二十両を彼にめぐんでやった。