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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,659 characters · 372 screens
と、かれらしい激怒のもとに、軍容をたて直し、末森城への再攻撃を計った。
「坪井山の成政が、捲土重来の勢いを見せておりますが」
諜報を聞いて、利家は、
「来るかな?」
と、つぶやいたが、またすぐ、何を思い出してか、こう笑った。
「……いや、襲せては来まい。自分と、成政とは、共に、織田家に仕えていた頃からの同輩だが、成政の性格として、くわッとするも早いし、冷めるのも早い男だ。激情と理智の、両極端をもち、その間に、損得もよく考えるたちだからな」
――果たして、
次の諜報によると、
「坪井山の敵本軍は、いちどは、当城に総がかりの態を示しておりましたが、何思うたか、にわかに方向をかえて、総勢、津幡街道を南へと、あとも見ずに、退却しはじめておりまする」
と、あった。
「それ見よ。成政らしい」
利家は笑っていたが、そのときかれの近くにいた一武者が、
「僭越ではありますが……」
と、身をすすめて利家に、献言した。
その武者は、三河の本多佐渡守正信の弟で、本多正重という若者だった。正重は、北陸の諸州を、武者修行としてあるいていたところ、ちょうど、この合戦の突発に会したので、利家がここへ急ぐ途上、路傍に名乗り出て、後学のため、従軍のゆるしを得て来た者だった。