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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,659 characters · 372 screens
与十郎は、その弟たちと相談の結果、
(よろしい。お味方へ加わろう。秀吉公へ、よしなに取り次いでもらいたい。そして、迅速に、大軍をこの方面へ、お向けあれ)
と、承諾のむねを云いやった。
一益は、心中、
「わが事成る」
と、よろこんで、即刻、これを秀吉に通報し、伊勢と鳥羽港にある秀吉方の水軍、九鬼嘉隆と会談して、
(まず、長島と清洲のあいだに兵を上陸させて、信雄と家康とを中断してしまうがよい)
と、策をきめた。
六月の十四日に、鳥羽港を発した船団は、十六日のまだ朝霧のふかいうちに、蟹江の沖に影を見せ、一益は、軽舟に兵をわかって、すぐ上陸し、兵七百をひきいて、難なく、蟹江城へ入ってしまった。
「まず、上首尾」
一益は、与十郎と、手をにぎって、ほくそ笑んだ。たしかに、ここまでは、上首尾だった。
蟹江からわずか小一里、蟹江川の同じ蘆荻に沿って、大野ノ城がある。
もとより、ほんの小城にすぎないが、清洲と長島との脈絡を中断するには、いかにも邪魔な地点にある。
「目ざわりな小城。攻めたものか。説いたものか」
一益が、気に病むのを、前田与十郎は、笑って、説明した。
「あれには、山口重政がいるが、この城には、重政の老母が、人質として来ておれば、よも、敵対はなりますまい」