Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,659 characters · 372 screens

Aozora Bunko

「おかしいじゃないか」

伝右衛門は、首をひねって云った。――二の丸から見ても、本丸の無数な狭間に、一点のあかりも洩れていないのが、さっきから、不審に思われていたのである。

「冬の木枯しは、三河名物だ。風のひどいのは、こよいだけではない。今夜にかぎって、灯をともすなとは、どういう仔細か」

「てまえどもには、分りません」

「御城代は」

「きのうから、お風邪気だそうで、引き籠っておられるとか、伺いましたが」

「ふウむ。……では、今し方、隠し門の裏坂を降りて行った大勢の者は、どなたの組の者が出たのか」

「存じません。べつに、てまえどもには、何もお沙汰はありませんから」

伝右衛門はいよいよ怪しんだ。――というのは、日頃からかれの胸には、城代の石川伯耆守数正にたいして、一つの同情と、また或る疑惑とが、同棲していた。

で、もしや? ……という危惧がすぐ胸をついたのである。かれは本丸へ通って、数正に直属している物頭の工藤三五郎に会って、

「数正どのにお会いしたいが」

と、云ってみた。

「お風邪気で――」

と、三五郎はすぐ断った。

「きょうも終日、お引き籠りで、人を通すなと、かたく仰せられて、臥せっておられますので」