Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,659 characters · 372 screens

Aozora Bunko

……さ、灸をおすえいたしましょう。お杯は、そのあとでさしあげまする」

「ば、ばかを申せ。やいとは、かなわん」

「お嫌いでも、御母堂さまの、おいいつけです」

「これだから、そもじの部屋には、つい足が遠くなるのじゃ。昼もわしの舞台を見てまで、笑いもせず、しかつめらしゅうしていたのは、そもじだけだぞ」

「こういう生れ性でございますもの、ほかの、お美しいお方のようには、なれと仰せ遊ばしても、なれませぬ」

寧子は、すこし怒ってみせた。――そして、自分がいまの茶々姫ぐらいな年頃であり、良人も、まだ二十六、七だった藤吉郎の頃にはと、ふと、昔なつかしい涙が目にたまってきた。

「オヤ」

秀吉は、妻のふくれ顔を、仰山そうに、のぞきこんで、

「泣いておるのか。こら、何を泣く」

「知りません」

寧子が、顔を横に向けると、その顔について、秀吉も、膝をまわした。そして禁じ得ないおかしさを顔につつみ、

「わしがまた、出陣するので、淋しいとでも申すのか」

と、いった。

「何を仰っしゃいますか。信長さまに、お仕えして以来、美濃や姉川の御合戦、また中国への長陣と――長い月日のうち、あなた様が、幾日、家にいた日がございましょう」