Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,659 characters · 372 screens

Aozora Bunko

これはかれが、秀次を愛していたからであるが、ほかに、なお重要な理由がある。

それは、かれが、日吉の幼少時代において、親不孝な自分に代って、ひとりの姉が、実によく母を扶け、そして母と共に、長い年月を、貧苦とたたかいながら、自分の成長を待っていてくれたことだった。

――かれは、そのありがたさを忘れていない。その間の、姉の孝養と苦労に、どうしたら報い得られようか。秀次の人となりを眺めるごとに、かれは常に、姉の心にもなって、その将来を思うのである。

だが。

秀次の性格は、決して、秀吉の望みどおりにはゆかなかった。

かれや、かれの姉とちがい、永禄十一年生れのこの御曹子は、生れながら、貧苦も知らず、世間の真実にもふれていない。

しかも、秀次の継いだ三好家は、室町以来の名門であり、父母の家は、月と共に栄え、叔父の秀吉は、日と共に、天下に赫々たる覇力と名声を揚げてゆく。――そのなかに、門族中の寵児として、愛され、媚びられ、諂われているのであるから、秀次の年頃として、思い上がっていたのはむりもない。

それが、一柳市助からも、返辞を聞き、つづいて秀吉からの書面で、峻烈な厳戒をうけたので、かれとしては生れて初めての戦慄をおぼえたことであろう。