Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,841 characters · 376 screens
だが、信長よりは、もっとそちの行動にくわしいものがいる。たれか知っておるか」
「そのような諜者がそれがしを尾けておりましょうか」
「そちの家内じゃ」
「お戯れを。……ちときょうは御微酔の御容子で」
「酔うてはおるが、申すことにまちがいはあるまい。そちの妻は、洲股に住居しておろうが、遠いと思うと、甚だ相違であるぞ」
「いや、どうも、悪い折に伺いましたな。……どうぞもうおゆるしを」
「はははは、遊びはとがめん。ひそかに、たまたまの桜狩など、大いによかろう。……しかし長浜で落ち合うてやるほどなら、なぜ、寧子を呼んで会ってやらぬか」
「はい」
「もうだいぶ夫婦の対面もしておるまい」
「なにか……愚妻から、殿へつまらぬ書状でも、さしあげて参ったのではございませぬか」
「案じるな、そういうことはないが、信長の思いやりである。――そちのみならず、誰の妻も彼の家内も、戦陣となれば、長い留守となるものを、せっかく少しでも暇を得たら、せめて無事な顔ぐらいは、たれより先に妻に見せてやるべきが……」
「御意ですが、ちと」
「異存があるか」
「ございまする。――ここ数ヵ月は、四辺も無事でございますが、それがし自身の気もちは、まだ寸毫も、戦陣から解かれてはおりません」