Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,841 characters · 376 screens

Aozora Bunko

大和守は或る折、鹿苑寺の一僧に、しみじみとそう述懐したことがあったという。――たしかに彼は、救うべからざる義昭の性情と、時代の行くところを知りながら、じっと、いまの二条の第にふみとどまっているらしい眉根をしていた。年はもう五十を半ばもこえた武将だった。

「和を乞う? ……将軍のわしから、信長ずれに和を乞わねばならぬ理由があろうか」

「一にも二にも、将軍家なる名分に囚われておいであっては、このまま御自滅のほかありません」

「勝てまいか、戦って」

「勝つわけにはゆきません。勝つと思し召して、この第に、防禦をなされたのなら、笑止千万です」

「では、な、なんのために、そちをはじめ、武将どもは、物々しゅう甲冑をしたか」

「せめては、死に花をかざらんものと思いまして。……二条の第に、覚束なくも、鉄砲をならべ、楯をかこみましたのも、足利御代々のいまや終ろうとする墳墓に、多少のさむらいはあるぞと、花を立てておるに過ぎません」

「……待て。撃たすな、へたに鉄砲などを」

義昭は奥にかくれて、日野、高岡などという誼みのある公卿と、額をあつめて、凝議していた。

午すぎ、日野参議から、ひそかに城外へ使いを出した。