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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,841 characters · 376 screens
ああ、よい茶の子
ささ、朝茶の子
すると――
茶々と万寿のふたりの上で、いきなり小銃の音が、パンパンパンとつづけざまに響いた。
櫓の狭間から彼方の嘲弄者の群れへむかって、つるべ撃ちを喰わせたのである。
「――怖ッ」
茶々は、うつ伏して、耳をふさいだ。万寿はさすがに男の児である。仰向いて白壁の狭間に這う弾けむりを見あげていた。
歌の声はやんだ。
敵の影も、霧にかくれた。
「……いなくなっちゃった。つまらない」
万寿はまだ見ていた。うしろの方で、乳母と母の声がした。
お市の方は、さっきから見あたらない二児をここに見出して、
「……まあ!」
と、さも胆を冷やしたように絶叫をもらし、
「あぶないッ。なんでこのような所へ」
彼女は、茶々をかかえ、乳母は万寿をひっぱって、半ば叱りながら本丸のほうへ連れもどった。
「なにしている」
良人の長政は、一群れの老臣や部将と共に、無念そうな唇をかんで突っ立っていた。
「御城外の歌声に、和子たちが釣られて、あの遠くに身を曝し、おもしろげに見ておりましたので……」
「……子どもだのう」
と、長政は苦笑して、
「奥へつれて行け」
「……はい」
「いや、待て待て。