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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,841 characters · 376 screens
ことば静かなほど、悲調はおおいようもないが、
「――次は長政の番でござる。ついては、生前のうちに、家中一統をあつめ、形ばかりでも、葬儀を営んでおきたく思う。――この小谷の奥曲り谷に、かねて和尚からいただいておいた戒名を刻んだ石碑が建っておる。あれを、ご苦労ながら、城中へお運びくださるまいか。僧のあなたが通るなら、敵もだまって通すでござろう」
「承知いたした」
和尚は、すぐ去った。それとほとんど入れちがいに、
「不破河内守光治というものが、御城門の下まで参りましたが」
と、部将のひとりが、駈けて来て告げた。
「不破河内とは、何者だ」
「織田殿の直臣にござります」
「敵かッ」
と、唾するように、
「追い返せッ。――信長の家臣などに、長政、用はもたぬ。帰らねば、城門のうえから、岩石でも、喰らわせてやれ」
長政の意を体して、城門のさむらいは、すぐ駈けもどって行ったが、また、他の部将が来ては、
「なんといっても、敵方の使者は、城門の下に立って、帰りません。――戦は戦、交渉は交渉、一国を代表して来た使者にたいし、礼を執らぬ法やある――などと抗議を申し立てておるのみで」
長政は、聴く耳も持たぬと、いわぬばかりに、顔を振って、