Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,841 characters · 376 screens
藤吉郎の手もとを見たからであった。万寿の喉を一突きに刺して、その一命をとるに何の苦もない――彼の手もとと彼の眼にぎくとしたからである。
さすが沈勇な老将の顔も、鳥肌に変っていた。白い鬢髪はそそけ立つばかりである。
「お、おのれ、幼い御嫡子を捕え奉って、な、なんとするぞ」
半ば、哭くが如き声だった。三河守は、悔いと怒りにふるえながらつめ寄った。
三河守のつれていた郎党たちであろう、かくと知って、
「わッ、たッ、たいへん」
「みんな来ういッ」
「いで合え! いで合え!」
声かぎり、絶叫し、手をふり、足を舞いして、急を告げた。
それと、また。
わんわん手放しで泣きながら逃げて行った茶々の告げ口からも、このことは、中門から奥の丸まで聞えて、
「すわ」
と、まっ黒な武者群が、いく組にもなって、駈けつけて来た。
忽ちであった。
万寿の喉に短刀を擬しながら、あたりを睥睨している異様な敵人のまわりには――文字どおり甲冑の「鉄桶」ができて――それも藤吉郎の手もとと眼ざしを恐れてか、甚だ遠巻きに――ただわいわい躁ぐしか、なす術を知らなかった。
「藤掛どの。三河どの」
藤吉郎は、そのなかの一つの顔へ呼びかけた。