Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,841 characters · 376 screens

Aozora Bunko

あやしげな当字や仮名まじりで、書風も至って稚拙であった。

ついでに手文庫のうちから、なにがしかの金を取り出して、書簡とともに於福に与え、

「これを持って、泉州の堺へ行くがいい。かねは路用に。てがみは堺の千宗易というものに宛ててあるから、その宗易に会って、身のふりかたを計るがいい。そちの天分を生かすように考えてくれるだろう」

と、教えた。

「では、お暇を下さいますので」

「そうだ。おまえのために」

「ぜひもございません」

於福は、よろこばないのみか、手をつかえて、泣いている。天分天分としきりにいわれるけれど、彼自身、何のことか分らないのである。むしろ秀吉の温情から遠ざかることが、将来のことより、現実に悲しかった。

「ははは、わからんやつだ。立つ日はいつなと、気ままにせい。べつに急きたてるのではないぞ。ただ忙しくなると、わしが忘れるから、にわかに云ったまでだ……いや、うれし涙かしらぬが、涙など見せるな、きょうはわしの歓びの日だ」

彼は風の子のようにぷいと庭へ出てしまった。朝陽は土いちめんにこぼれている。すたすたと本丸の奥の丘へ上ってゆく。一叢の林のなかに、古い神社がある。